ミューアハットから見る朝陽は
まるで未来を照らしてくれるようだ。
ジョンミューアの名前がつけられたこの峠には
ジョンミューアのふたり娘の名前がつけられた湖があり、
夕陽はワンダレイクを茜色に染め
朝陽はヘレンレイクを藍色に染める。
小鳥が導いてくれた光景に時間を忘れてた。
さぁ、後半戦のはじまりだ!!
ぼくは歩き出す。
今日もまた、長い距離を歩く。
荒野を、谷を、草原を、森を
風と共に抜けていく。
飲用水を作り、テントを張り、ご飯を作り、一日の予定を考える。
毎日毎日、生きるために生きている。
旅をしているわけでもなく、
生活をしているわけでもない。
この自然のなかで生きるために生きているのだ。
頑張ったご褒美は
インスタントココア。
数日に一度だけの贅沢品だ。
こういう日々を過ごしていると
今までどんな幸せな日々を過ごしていたんだと思う。
・・・そうか!
今が、ほんとうに幸せな日々なのんだ!
ぼくはそれに気づいた。
この大自然の中で生きるために必要なことだけをして
あとはすべて、自分の思いのままに過ごせる。
毎日、最高の朝陽で目覚め
毎日、最高の夕陽を眺め
インスタントコーヒーがどれだけうまいことか!
大空を浴びながら昼寝をして
大樹に囲まれて夜を過ごして
空気が風がどれだけ身体を癒してくれることか!
夜空に浮かぶ銀河物語に思いを馳せて
焚き火の灯りで誰かに手紙を書いて
誰かを想うことがどれだけ心を満たすことか!
物質的な豊かさではない「豊かさ」を
僕はいま、生きているんだ。
嬉しくなってまた、手紙を書く。