長い旅の日々を思い出すとき、
人はどんな光景を思い出すのだろうか
まず、必ず誰にでも忘れられない朝陽があると思う。
アメリカの旅でMt.ホイットニー山頂から見た朝陽と
グランドキャニオンから見た朝陽は忘れられない想い出だ。
Mt.ホイットニーは夢だったロングトレイルを歩き終えたという感慨深い気持ちが溢れていた。
グランドキャニオン最終日から見た朝陽は
まさに「長い旅の途上から見た朝陽」だった。
大きな自然の中にいると朝陽は特別な存在だ。
藍色に染まった暗闇の世界に
ゆっくり空から朝の光が落ちてくる。
「朝が来た・・・」
ありふれた言葉が特別な意味を持っている。
ありふれた一日が始まることに価値が見いだせるから、
なのかもしれない。
朝陽ってのは特別な感情と溶け合うから
見つめていると、とっても温かくなる。
あんなに不安だった夜が
まるで夢だったかのように楽しみに変わる。
あんなに遠かった未来が
まるで目の前にあるかのように掴もうとする。
あんなにつらかった昼が
まるで運命だったかのようにメッセージに変わる。
あんなに遠くへ行った過去が
まるで今起きているかのように現在につながる。
「きみは同じ人間なんだから
他の人にできることはすべて
きみにもできることなんだ、本当だよ
きみは違う人間なんだから
きみに起こる出来事はすべて
きみにしか起こらないことなんだ、本当だよ
だから、さぁ旅を続けよう
きみの才能も運命も
走り出せばすべてうまくいくから
本当だよ、さぁ、旅を続けよう」
ぼくは誇らしく親指を空に突き刺し、グランドキャニオンを後にした。