オランダ旅編　第1話～おしゃべり～

オランダ人はおしゃべりが大好きだ。

それはそれはとても大好きだ。

 

どのくらい好きなのかを今から説明しよう。

 

電車の席で隣に座った人はほぼ間違いなく話しかけてくる。

特にカメラとバックパックなんか持っていれば、

旅行者だと分かるので相手も興味津々だ。

 

気がつけば、車両内はみんなでおしゃべりをしている。

田舎を走る列車だったので、みんな顔見知りなのかと思ったら、

駅に着くと、みんな何事もなかったかのように離れ離れに散っていく。

 

間違えた列車に乗ってしまったとき(初めて電車に乗ったのに)

オランダでは車両内でチケット確認をするのだが、

車掌さんは間違いを教えてくれることはなく、

僕が向かっている街の素晴らしさについて一通り説明をしてくれた。

「とにかくきみは良い選択をしたよ！」

でも、この電車はその街にはたどり着かなかった（笑）

カフェでひとりコーヒーを飲んでいたら、

少し離れた席で過ごしていたファミリーが声をかけてきて、

一緒に飲まないかと誘ってくれる。

 

どんなに小さな街を歩いていても

「ハロォ！ヤパネル？（日本人？）どこへ行くんだい？」

 

広場という広場は彼らにとっておしゃべりをする場だ。

朝、仕事前にコーヒーすすりながら喋り

昼にはサンドイッチ片手に喋り、

昼過ぎにはアイス頬張りながら喋りまくる。

 

オランダと言えば、世界的に有名な美術館がたくさんある。

そう、もちろん美術館だっておしゃべりの場だ。

館内にはオランダ独特の低い声が響いている。

日本では係りの人が寝るくらい静まり返っているのに

ここオランダでは笑い声がこだましている。

 

デンハーグという街はオランダの政治関連の建物がすべてそろっているのだが、

日本でいう国会議事堂にあたる建物の前も広場になっていて

老若男女ベンチに座っておしゃべりをしている。

おしゃべり好き

オランダ人の特徴をそう説明する人は多い。

でも、ショートホームステイをしたとき少し違うように感じた。

オランダ人は人が好きなんだろう。

 

家族はみんなで手をつないでお出かけをする。

おじいちゃんおばあちゃんも手をつなぐ。

夕食後のサイクリングや散歩は家族揃ってする。

週末のサッカー観戦は友達と家族とそれぞれ出かける。

街中を若者からおじいちゃんおばあちゃんまで

自転車を２人乗りして駆け抜けていく（法律的にどうかはわかりません）

有名なオランダ人画家のゴッホにもそんな絵がある。

 

奥さんの買い物はいつも決まってご近所さんと行く。

もちろん、買い物後にはカフェへ。

 

大人は仕事を定時ピッタリに終えると、

まず同僚とバーに行く。

一杯ひっかけておしゃべり。

そして、夕食は家族で過ごす。

 

夕食を食べ終えると、

リビングに家族が揃って

みんなで映画を見たり、テレビを見て、

そして、コーヒータイムというおしゃべりの時間がある。

子供はココアを飲む。

そう、必ずこの時間が毎日あるのだ。

 

ある日、ホームステイ先のリビングでお父さんがテレビを見ていて、

僕はネットで調べ物をしていた。

子供がお父さんのところに近づいてきて

「ねぇ、父さん、今日学校でね・・・」

と話しかけると、お父さんはテレビを消して子供を膝の上に乗せた。

 

お父さんは微笑みを浮かべながら

目と目を合わせてうんうん、と頷きながら話を聞いていた。

 

驚いて子供が寝た後、聞いてみた。

「私のお父さんもそうしてくれたよ。

オランダ人はおしゃべりするのも人の話を聞くのも好きなんだよ。」

 

オランダは「子供が幸福と感じる国」で世界一位

研究者はきっと個性を大事にする教育制度や子育て支援の政策にその理由を求めるだろう。

 

でも、僕は知っている。

子供が幸せなのは家族と過ごす時間が幸せだからだ。