いつのころからか、僕は旅先で手紙を書くのが好きになっていた。
思い出せば、それはオランダで書いたのが始まりだったような気がする。
ただ、単純にエアメールなんていうお土産もいいな、と思ったから。
旅で感じたことや考えたこと、思ったこと。
旅でいつも持っていくノートに書き留めていることを
話口調で書いてみたり、物語風に書き下ろしてみたり。
旅先の写真が現像できれば、それも同封する。
できないときは、ポストカードを買って送る。
今では世界中で無料wifiが飛んでいてメールやfacebookなんかで近況を報告できるのだけども
ぼくはそれでも手紙を書くことにしている。
旅先で思い出した友へ
思いつくままに好き勝手に書いていく。
オランダには街中にカフェが溢れている。
オランダ人はコーヒーが大好きで、おしゃべりが大好きなので
一日に何度もカフェに行くのだとか。
アムステルダムの街を上から一望できるデパートの最上階のカフェで
ぼくは友へ手紙を書いていた。
すると、カフェのマスターがおまけのチョコを持ってきてくれた。
そして、彼は簡単な英語で、ゆっくりと僕に語り始めた。
星の光は遠くからやってくる
とてもとてもとても遠くから
なのに、全然色褪せないんだ
きみが寂しいときは優しさを
きみがつらいときは勇気を
きみがうれしいときは幸福を
星の光はとても遠くから運んできてくれる
手紙も同じように運んできてくれる
そう、君は星なんだ!
彼は孫におとぎ話をするように静かに語り終えると、
店の奥へと消えていった。
僕はこの日から手紙を書くのを好きになったのだと思う。