caravanの新譜を聞いていたら
ネパールにある聖地ゴサインクンドへの巡礼の道を歩いている時のことを思い出した。
鬱蒼とした原生林の中を歩いて行くと
見慣れないおじさんがいた。
見慣れないというのはこの近くの村に住んでいる山岳民族とは少し違った服装をしていたから。
人生を深く生き抜いてきたような顔の皺と小さなバッグが印象的なおじさんだ。
彼はマニ石を注意深く触っていた。
マニ石とはチベット仏教の真言が書かれた石でいつ誰がつくったのかは分からないが、それには作った人の祈りや想いが刻まれているという。
僕に気がつくと微笑んで、「ナマステ(こんにちわ)」とあいさつを交わした。
僕たちは特に何も話すことなく近くの塚で休んでいた。
その塚のすぐ後ろには大きな木が一本あって、枝からタルチョ(青白赤黄緑の旗)をぶら下げている。
塚は大きな木陰にすっぽりおさまっている。
彼は少ない荷物を持ち上げ、僕のもとに近寄ってきた。
どうしたのだろうと、彼を見ると
彼の目は先ほどと違ってとても真剣な目つきだった。
そして、こう言った。
「~~~~~~」
言いながら山の上へ続く道を指さす。
僕には何と言っているのか全く分からなかった。
それが英語と日本語ではないのは確かで、
どこの国の言葉なのかも検討がつかない。
彼は手を差し伸べ、僕らは握手をした。
彼はくるりと背を向け、山を下りて行った。
僕もつられるように出発した。
僕も背を向け、山を登る。
彼は何を伝えたかったのだろうか
息を切らしながら、僕は山を登る。
苔むした世界、垂直に伸びるヒマラヤスギ
薄暗い巡礼の道、リズムを刻みながら進む旅人たち
僕らの周りを急に雲が包む。
太陽が遮られ、あたりはさらに暗くなる。
世界が一瞬で凍りつくような寒さに包まれる。
そのときだった。
まばゆい光が道を照らした。
“光と闇を持った者だけがこの道を行ける”
言葉が舞い降りる
なんて言い方があるがまさにそんな感じだった。
誰かが頭の中でそう伝えてくれた。
どんな人間にも闇はあって、抱えて生きていると僕は思う。
そして、あの大樹と一緒なんだ。
大きな闇を持っているものはたくさん光を受け止める事が出来るんだ
旅ノートにそう書き留めて、僕は旅を続けた。
“全ての出来事には意味があって、その全てが君と誰かを繋ぐ
あの子はそんなこと言ってたけど...そうかもしれないなって思うのさ
痛くてたまらない傷があるだろう 悲しくて眠れない夜があるだろう
言葉にならない想いを知ったとき 新しい道は開いていくんだよ”by caravan