「好きな事をやって生きていきたい」
でも今、人々が好きな事をやって生きていこうとすればするほど
人々も、この地球も破滅に向かっていってしまう。
そんな生き方を僕らは当たり前のようにしてしまっている。
「自然のために節約!我慢!自己犠牲!~しなきゃ!」
あれ?なんだか苦しい・・・
いつからか、僕は旅しながら「自然と調和した生き方ってなんだろう」と考えるようになりました。
あらゆる国の都市や地方、先住民族の村、荒野、原野。
そこには幾千もの職業と生き方、文化、思想、風景があって
誰もが何もかもが、かけがえのないものなんだと気づかされた。
しかしその反面、環境破壊に戦争、人種差別。
僕たちの生き方が地球上のあらゆる問題を引き起こしている。
僕が木工で生計を立てようとすれば、木は伐採され続ける仕組みになっていた。
何かを否定するわけでもなく、何かを排除するわけでもなく
自然と調和した平和な生き方はないのか・・・?
真冬の長野、山間の集落のはずれにある樹齢500年のトチノキ
雪は1m近く降り積もっていて、あたりは静寂に包まれていた。
僕は幹にもたれかかってコーヒーを沸かした。
雪が解けるころ、新緑が空一面に広がる。
虫たちは全てを食べつくしたりはしない。
しばらくすれば花が咲き乱れる。
ミツバチはせっせと受粉を助ける。
葉の色が変わるころ、生き物たちはトチの実を拾う。
誰もがとりすぎない。自分の身の丈に合った量だけ取っていく。
しばらくすれば雪が降り、誰もこの木には近寄らない。
しかし、リスたちが掘り出し忘れた実は静かに発芽し
雪が解けるとともに新しい芽が地上に顔を出す。
数百年もすればまた新しいドラマがそこで繰り広げられるのだろう。
『誰もが自分らしく豊かな人生を送れば送るほど、地球が豊かになる生き方』
そんな生き方を、街を、社会を、国を作っていこう。
コーヒーを一気に飲み干して僕は街へ降りて行った。