森の中を旅していると
一見、なんともない草木を見つけて
写真を撮ることがある。
春なのに、花も咲かせずに実もつけずに
秋なのに、紅葉もせずに種もつけずに
ただただ、葉を広げているその草木に
とても魅かれて写真を撮っている。
僕は「旅人」と呼ばれることに少し抵抗がある。
旅人って言葉の響きだけで人から羨ましく思われたり
まるで特別な存在のように扱われるのが特に好きじゃない。
また、非社会的な人間というか遊び呆けているイメージも好きじゃない。
実をいうと僕はサラリーマンとか公務員とかの
友達や知り合いを尊敬している。
嫌味な言い方ではなくて、僕には真似できない。
彼らの才能と努力の結果が今現在の彼らなのだから
僕には到底真似できるような存在じゃないと思うからだ。
年収や役職には現れない彼らの生き方に垣間見えたとき
ふと、彼らの今までの努力や生まれ持っての才能を想像して
なんてかっこいいんだろう、と尊敬している。
あでやかな花を咲かせるわけでもなく
美味しい実を実らせるわけでもなく
葉を鮮やかな色に染め上げるわけでもなく
新たな命となる種をまき散らすわけでもなく
両手を大きく伸ばして、しゃんとしている草木
まるで、自身が持つその才能とこれまでの努力を誇らしげに胸を張る姿
僕はそれに気づいたとき、
うれしくなって写真を撮っているに違いない。
過去を振り返って、
もっと、ああしておけばとか
もっと、こんなことできたのにとか
そんなこと考えられるのは当たり前だ。
あなたの才能と努力の結果が、今現在のあなたなのです。
過去を振り返って、
あの時、「最善を尽くした」と思えるならば
胸を張ってください。
その姿は、ほんとうにかっこいい。