俺の人生を大きく変えたきっかけの一つに小笠原諸島での日々がある。
その仕事場はアホウドリの繁殖地で
毎日仕事を終えるとアホウドリの生活を撮りに行っていた。
アホウドリの雛は12月~1月ころに誕生し、
半年後には北へ何千kmもの旅に出る。
その間、雛は親が獲ってきてくれたイカなどをエサにしてすくすく育つ。
さて、雛が旅に出る少し前に面白いことが起きる。
親だけが先に北へ旅立つのである。
残された雛たちは懸命に飛ぶ練習を始める。
1ヶ月ほど、彼らは誰に教えてもらうわけでもなく
ただ、飛び立つ練習を毎日毎日繰り返すのである。
そして、生まれてから半年がたつころに、
彼らは何か合図があったかのように、
同じ日に次々と空に駆け出していく。
初めての旅が命を懸けた何千kmの旅である。
俺が小笠原にいたとき、
ちょうど半年後に、アメリカの原生林を旅するつもりだった。
その境遇をアホウドリに重ねていた。
「大丈夫。空を飛ぶ才能はもう持っている。ただそれを磨くだけ、信じるだけ。大丈夫。」