ネパールの首都カトマンズは首都にしては小さく、大きなビルもない。
見た目は発展途上国とはいえ、決して裕福には見えない。
トレッキングの手続きを終え、大きな通りを歩いていると
「お金ちょうだい」
と、ぼろぼろの服を着た女の子が近づいてきた。
無視して進むと、最後は膝にしがみついてきた。
「お金ちょうだい、お願い」
もう一度懇願してきた。
東南アジアをはじめとする発展途上国では当たり前の光景。
経済成長を遂げれば、そういう子が減るというのは嘘だ。
僕はアメリカで
それが嘘だってことを見てきたばかりだったから
それは希望のない悲しい光景だった。
そんな都会から逃げるようにランタン国立公園へ向かった。
発展途上国でも田舎に行けば、
そういうお金から逃れられなくなった人々を見なくて済むと思っていた。
現実は違った。
主要トレッキングルートにある小さな町は
大小あれども、トレッキングに訪れる観光客目当てのロッジがあり
一番遠い村にも外国製品のジュースやお菓子がある。
もちろん、お金もある。
「今日はどこのロッジに泊まるんだ?」
「あの村のロッジは高いからうちに泊まっていけ」
昼過ぎになると、毎日そうやって声をかけてくる人に会う。
こんな山奥に来てまで、なんで・・・
正直、気持ちが落ちていった。
なぜなら、子供たちも同じように声をかけてくるからだ。
「今日はどこのロッジに泊まるの?」
「うちでお茶を飲んでいきなよ」
声をかけてくる子供たちに笑顔はない。
彼らは真剣だ。お金儲けに本気だ。
村の手前にある何にもない草むらに腰を下ろして川を眺めていた。
少年「ハローー!こっちへおいでよ!」
離れた斜面に3人組の子供たちが見えた。
少年「俺たちをそのカメラで撮ってくれよ!」
よしき「なんか、ポーズをとってみて!かっこいいやつを!」
少年「どんなのがいい?」
よしき「ジャッキーチェンは知ってる?」
少年「もちろん!こうだろ!」
少年たちは各々ポーズを構えた。
カメラのシャッターを切るたびに彼らは
見せて見せて、と躊躇なく顔を近づけてくる。
彼らは思いっきり笑った。
気持がいいほど、大きく笑った。
僕もつられて思いっきり大きく笑った!
めっちゃ、気持ちが良かった!!
ネパールに来て心の底から笑ったのはこの時がはじめてだった。
You are nice guys!
カメラは
「自己表現ツールではなくてコミュニケーションツール」
だと、こんな山奥でも教えられた。
シエダラくん「よしき!今日はどこに泊まるんだい?」
つづく