アメリカ・ヒッチハイク 第1話 ~「アメリカじゃヒッチハイクは難しいよ」~

太陽が砂漠という荒野に沈んでいく

ここにもう、8時間もこうして立っている。

右手を上げる気力が失われていた。

 

ロングトレイルを終え、そのままグランドキャニオンを目指してヒッチハイクを始めたのは昨日。

「アメリカ=ヒッチハイクの国」

遠くて行ったことのない国のイメージなんて

大概は勝手な妄想にすぎない。

 

1台を捕まえるのに3時間以上は当たり前だった。

日本の倍以上、時間がかかっている。

 

それでもなんとか、ここまでたどり着いた。

 

この街は四方を砂漠で囲まれている。

街というよりも巨大なサービスエリアと呼ぶほうが日本人には想像がつきやすい。

砂漠の真ん中に無理やりアスファルトを引きつめ大型チェーン店が立ち並ぶ。

 

日差しを遮るものはない。

足元をアスファルトで固められた観賞用のナシの木が駐車場に少しあるばかりだ。

コンビニで買った水は気づいた時には温水になっていた。

 

実は8時間の間に3台車は止まった。

ただ、すべて方向が違っていたのだ。

この街は大きな交差点になっていて

南に行けばロサンゼルス、北に行けばラスベガスにソルトレイクと大都市が並ぶ。

西に行けばまだ、小さな都市がある。

そして、僕が向かう東には砂漠しかない。

グランドキャニオンは約300マイル(約500km)の砂漠を越えた向こう側にある。

今日、朝からヒッチハイクをして進んだのは60マイル(100km)。

 

気がついたら涙が目に溜まっていた。

なんでやねん、なんで泣いてねん。

小さく弱く不慣れな関西弁でつぶやいた。

 

通り過ぎていく人々がどこか違う世界に生きているように思えた。

アメリカでヒッチハイクをしていて一番印象に残っているのは

人々の眼だった。

「見えていないふり」は日本でもよくあることだけど

「なんでヒッチハイク?」といような怪訝な眼をしている。

そして、乗せてくれた誰もが

「アメリカじゃヒッチハイクは難しいよ」と、どこか寂しそうに言う。

 

話しかけてくる人々が僕に向けて言うセリフは

「お金をくれ」と「ここでヒッチハイクするな」

あとは薬臭い人が意味不明な言葉をぶつけてくるだけ。

 

ツライというよりも悔しかった。

なんで悔しいのかはよく分らない。

ただ、気がついたら泣いていて、いつもより夕陽がまぶしかった。

記念に一枚自分の泣き顔を撮った。

 

陽が落ちて、辺りが暗くなり、今日のヒッチハイクを断念。

明日また、朝からヒッチハイクをしよう・・・

どこか自信がなくなっている自分がいた。

どこかアメリカ人を信用できなくなっている自分がいた。

 

薄暗い砂漠の町を歩いていると後ろから口笛が聴こえた。

それはメロディーではなくて僕に向かって吹かれた呼び笛と思った。

後ろを振り返ると、ひとりの男性が手招きしている。

ただ、暗くてどんな人が呼んでいるのか、本当に僕を呼んでいるのか分らなかった。

 

でも、なぜか僕は彼のほうに向って歩いていた。

 

つづく。

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Journey's Diary

 

大学卒業後、国内国外旅してきて

 

撮り続けた写真と綴ってきた言葉を

まとめたものです

 

長くて多いので

暇な時に読んでください♪

Book of my journey

 

ひとり旅をはじめてから

カメラとノートを

常に持ち歩くようになりました。

 

その風景写真と短い言葉たちを

アメブロにて公開していました。

そのページをまとめたものです。

 

これまたたくさんあるので

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ここにまとめています。

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