薄暗い砂漠の町を歩いていると後ろから口笛が聴こえた。
それはメロディーではなくて僕に向かって吹かれた呼び笛と思った。
後ろを振り返ると、ひとりの男性が手招きしている。
ただ、暗くてどんな人が呼んでいるのか、本当に僕を呼んでいるのか分らなかった。
でも、なぜか僕は彼のほうに向って歩いていた。
よしき「Hallo?」
彼「Hallo!Did you have dinner?」
よしき「Not yet」
彼「Ok.Come on」
彼はすぐ横のメキシコ料理のチェーン店を指差した。
え?おごってくれるのーーーー!!!
よく、こういう展開の話をすると
信じてついていくことを驚くけど
ひとり旅のポリシーに
「人の親切は疑わない」というのがある
(だから、インドには行きたくない。笑)
目の前に大好きなブリトーが並ぶ。
ほくほくのアボガドがうまい!
アメリカに着いて最初に食べたのがブリトー。
それ以来、街に来るたびにブリトーを探す。
アメリカ料理は口に合わないけど、メキシコ料理は大好きだ。
冷たいコーラがうれしい。
よしき「うんめぇー!!」
彼「ははは」
よしき「うんめぇー means “so delicious” in japanese!」
彼「Unmee!」
僕らはささいなことで笑い合った。
彼は長距離トラックのドライバーでこの街に入るときに
どうやら、ヒッチハイクをしているのを見ていたらしい。
彼はロサンゼルスに向かっている途中。
彼「ここから先は砂漠しかない。誰も行かないんだよ。」
「それに、アメリカではヒッチハイクは難しいんだよ。電車を使ったらどうだ?」
彼もどこさ寂しそうにそう言った。
彼はアメリカに移住してきて10数年、メキシコ出身。
彼は自分の過去のことをあまり話さなかった。
ただ、その口調にはどこか困難を乗り越えてきた者の風格があった。
彼「今日はどこで寝るんだ?」
よしき「わからない。テントを持っているから」
彼「おれのトラックの荷台を使っていいぞ」
よしき「Wow!Exciting!」
彼は何度も携帯でおれの写真を撮って奥さんに送る。
さらにそのまま、Facebookに投稿する(笑)
寝る間際、彼に伝えた。
「明日、電車を使うことにするよ」
彼は落ち着いた声で
「Ok.明日の朝、駅まで送るよ。Good night」
寝袋にくるまると、明るい夜空に星がいくつか見えた。
星の光がにじみ始めた。
また、泣いているよ
悔し涙の次は嬉し涙か忙しいもんだ
ほんとに。
ほんとに、ありがとう。
まだ、夜がしらける前に僕らは出発した。
遠くに闇に浮かび上がる都市の明かりがある。
暗い車内で僕は彼に話した。
「昨日、ヒッチハイクをしていてとても辛かった。
ヒッチハイクがこんなにつらいなんて初めてだったから。
泣いてしまったんだ。」
彼「I know your feeling」
「僕はヒッチハイクが好きでやっているのに、嫌いになってしまいそうだった。
諦めてしまったら、ヒッチハイクが嫌いになると思った。
だから、どうしようか本当に困っていた。
あなたがいなかったら、きっとヒッチハイクが嫌いになっていたと思う。
ありがとう。」
彼「I think nice meeting」
駅の近くで降ろしてもらう。
僕はThank you so muchと言いながら握手をして、抱きしめた。
彼は何も言わなかった。
僕もそれ以上何も言わなかった。
それだけでずべてが伝わると思った。
それだけですべてが伝わっていた。
トラックが大きな明るい街へ消えて見えなくなるまで手を振った。
そこから、歩いて10分。
いなか町の駅に着いた。
しかし、その駅にはチケットオフィスがなかった。
チケットが買えない!!!
まだまだ、つづく。