雲ノ平への旅 2日目 〜夕日を見る日〜

<雲ノ平への旅>2日目 2021.10.5

双六小屋~三俣山荘~黒部源流~雲ノ平~雲ノ平テン場 テント泊

 

登山を始めた人、誰もが憧れる雲ノ平へ。

どの登山口からでも2泊3日はかかる最後の秘境、日本最奥地雲ノ平。

 

その地へ行く途中にも見所がたくさんある。

まずは三俣山荘だろう。

 

黒部の山賊という、ここを舞台にした実話をまとめた本がある。

戦後間も無く、山奥で狩猟を行い、ときにはそのまま越冬した人々がいた。

そんな彼らの噂に尾ひれがついて山賊となったのだとか。

 

その山賊たちとともに小屋と登山道を整備した話があり、

その小屋が三俣山荘である。

三俣蓮華、鷲、に囲まれたこの地には水が豊富に湧き出る。

テント場にも小さな沢があるほどだ。

こんな標高が高く森林限界地にすら、飲める水が湧き出るのが

日本が豊かな地である証拠だろう。

 

三俣山荘にはこの湧き水でつくるサイフォンコーヒーがある。

ぜひここで一休みしてもらいたい。

 

三俣山荘をあとにして、少し下ると黒部源流がある。

この季節の水は凍るほど冷たい。

ダケカンバの葉は黄色く色づき、ところどころには真っ赤に染まるナナカマドがある。

もう秋が深まっている。

 

川を渡り、山の奥へと足を進める。

ふと振り返るとまっすぐ天空に突き刺さる槍が岳と三俣山荘が秋の青空に並ぶ。

朝陽が照らす斜面が黄金色に輝く。

 

森林限界の上にはウィルダネスエリアと呼ぶにふさわしい荒野が広がる。

この地は日本でも有数の風が強いエリアでもある。

大陸からの偏西風が直接あたるからだ。

そのため樹木はほとんど生えていない。

いや、少しでも大きくなるとすぐに倒されてしまうのだ。

 

しかし、足元にはチンゲルマの群生がなびいている。

いったいどうして、こんな荒地で生きるのだろう。

いや、どうしてこんな荒地で生き延びる術を持っているのだろう。

 

登り切ると今日の目的地・雲ノ平と山荘が目に入る。

誰もが憧れ、誰もが一度は目指す雲ノ平だ。

周辺には百名山、二百名山、三百名山が立ち並ぶ。

天気が良ければ、その名山たちの勇ましい姿を拝める。

彼らを背景にした雲ノ平もまた美しい。

 

雲ノ平には庭園の名がついた美しいエリアがいくつかある。

この土地の短い夏には高山植物の花が咲き乱れる。

秋にはほとんど花は咲いていないが、代わりに紅葉の眺望が美しい。

ここで黒部源流で汲んだ水でご飯とコーヒーを作る。

 

美しい景色と、うまい飯とコーヒーがあるだけで

どうしてこんなに満たされるのだろう。

 

旅に出ると必ず、夕陽を見る日を作る。

綺麗な夕陽を見るためだけにすべての予定を組む日だ。

今日はその日だ。

早めにテントを張り、他の登山客と交流し、夕陽に備える。

 

太陽が傾き始めると、ベストな夕陽スポットを探して歩き回る。

地図からだけではそのスポットを探し当てることはできない。

自分の足で探すのが一番早い。

 

気温は一気に下がり、風が強くなる。

水筒に入れた暖かいチャイを飲みながら、シャッターを切る。

大地も空も、高山植物も岩石も関係なく夕陽色に染まっていく。

冷たく暗い夜が来る。

その最後の明かりにこれほど心を打たれるのはなぜだろう?

 

アフリカのサバンナに住むライオンたちは必ず夕陽を見つめるという。

さまざまな説があるが、まだはっきりその理由は分かっていないという。

 

夕陽が完全に落ちると空のマジックアワーが始まる。

雲が東の空から少しずつ色を変えていく。

黄金色から妖艶な赤紫、そして黒く。

 

マジックアワーを見届けるとテントに帰り、暖かい寝袋に逃げ込む。

あとは寝るだけだ。今日1日を思い返しながら、寝る。

長いロングトレイルを歩き切るコツはたくさん寝ることだ。

朝早く寒くて起こされるから、できるだけ早く寝る。

それが昼間にたくさん歩くために必要なことだ。

もちろん、体のケアも忘れないように。

 

この日、夜中に目を覚ましすと鐘の音が少し遠くから聞こえた。

クマよけの鐘の音のようだ。

しかし、もう時刻はかなり遅い。

やっとテント場にたどり着いた登山者だろうか?

 

この鐘の音はしばらく聞こえた。

ずっと同じ距離から聞こえていた。

黒部の山賊に出てくる話をいつくか思い出していた。

この地で遭難した人々の話、不思議な体験をした人々の話、化け物が出てくる話。

鐘の正体はわからないが、確かにその鐘はずっと聞こえていた。

 

つづく

Profile

 

そのまんま、自己紹介です♪

Journey's Diary

 

大学卒業後、国内国外旅してきて

 

撮り続けた写真と綴ってきた言葉を

まとめたものです

 

長くて多いので

暇な時に読んでください♪

Book of my journey

 

ひとり旅をはじめてから

カメラとノートを

常に持ち歩くようになりました。

 

その風景写真と短い言葉たちを

アメブロにて公開していました。

そのページをまとめたものです。

 

これまたたくさんあるので

暇つぶしにしてください。

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木をメインにした工房【旅をする木】の

作品集やものづくりへの想いを

ここにまとめています。

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