縄文杉に会いに行く

<縄文杉に会いに行く>

@屋久島の旅 2023.8.21

 

はじめて屋久島に訪れる人のほとんどが縄文杉に会いに行く。

「見に行く」のではなく、「会いに行く」。

 

人が木を観れば、木は人を観る。それは共時的に起こる。見ると同時に見られること、それこそが「会う」ということの本質である。

 

どんなに高性能のスマホやパソコンでも共時性は失われる。

情報を映像に変換してしまうために、必ず時差と誤差が生まれる。デジタル機器では目と目を合わせることができないから、見ると同時に見られることが生まれない。目が合うということは存在を確かめ、認められることを意味する。だから無視ほど辛いコミュニケーションの断絶はない。

 

だからこそ私たちは、これだけコミュニケーションツールが発達したとしても、いまだにカフェで待ち合わせして、目と目を合わせて、長時間も無意味なおしゃべりに時間を費やすのである。

 

ただ、会うために私たちは待ち合わせの場所も過ごす場所にもこだわる。

それは会うということがただの視覚情報の刺激ではなく、

同じ時空間を共に過ごすということであり、五感を共有することであるからだ。

それこそが本物のコミュニケーションだと言っても過言ではないし、多くの人が賛同するだろう。

 

見ると会うでは意味が全然違う。

たとえば私たちは誰か有名人の講演会に参加したとしても、その有名人に会ったとは言わない。「生で見たことがある」と言うに違いない。

 

おそらくその有名人と握手をして、一言二言くらい言葉を交わした人は「話したことがある」と自慢し、誰かの紹介の元、プライベートでお茶したりご飯を食べたことがあれば「会ったことがある」と堂々と言うだろう。

そこには確実に違いがある。

 

私たちは視覚情報以外のものを共有してこそ、会うのである。それは同じ空間で同じ時間を共に過ごしたという共通で相互の実体験に基づく。この同じは決してデジタル技術では再現不可能なのだろう。

 

ズームやビデオ通話が発達したとしても私たちはやはりそれだけでは「会った」とは言わない。必ず「ネット上では」という枕詞を使うだろう。それだけ五感を通じた共有体験は私たちにとって特別なのだ。

 

たとえこれからどんなにデジタル技術が発達したとしても、会うためにこの身体を運ぶしかない。この身体に宿る五感を共有してこそ、私たちは会うことができるのだ。

 

これだけSNSyoutubeなどで縄文杉のデジタル情報に溢れている時代にも関わらず、今でも1100人以上の人々が往復8時間以上かけて縄文杉に会いにいく。わざわざ、屋久島まで飛行機やフェリーに乗って会いに来る。

 

これは会うことがどれだけ特別なことであり、人間にとって重要なことであるかを証明しているだろう。そして、会うことを選んだ人だけが縄文杉と時空間を共有した体験を思い出として心の中にしまうことができる。

 

その体験は、デジタル情報で見たことしかない人には決して分からない。高性能のカメラで収め、音を収集し、空気を持ち帰ったとしても、だ。

 

この身体と五感にだけ刻まれた情報を私たちは思い出として語ることも思い出すこともできる。そして、それはおのおのの物語として誰かに話すことで、想いも一緒に受け継がれることだろう。

 

現代ではわざわざ会いに行かなくてもまるで完結できるかのような錯覚情報が溢れている。情報化社会とは錯覚型社会と言い換えることができるだろう。

 

私たちは会った気になるし、旅した気になるし、食べた気になるし、そこに居たような気になれる。最新のコミュニケーションツールはそれを巧みに再現する。そして、私たちはできるだけ簡単に済ませようとして、会わない理由を考えてしまう。

 

しかし何度も言うが「本当に会う」ことだけは決してできないし、特別な体験である。だから私はいつも思うのだ。「いいから、それでも会おうよ」と。

 

会うことで世界はどんどん広がっていく。会うことで時間はどんどん膨らんでいく。会うことで縁はどんどん繋がっていく。それは見ることでは決して起こることがない。デジタル情報を見ることはただの現象体験に過ぎないが、会うことはその現象が「出来事(デキゴト)」となって魂が宿る。これは「コトダマ」のひとつである。

 

話の話題はなんだっていい。たいてい話の内容なんてすぐに忘れてしまうのだから。ただ目と目を合わせて話をするだけで、つまり「会う」ことで私たちは今日もイキイキと生きていけるのである。

 

だからこそ私たちはわざわざ縄文杉に会いにいくのである。

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Journey's Diary

 

大学卒業後、国内国外旅してきて

 

撮り続けた写真と綴ってきた言葉を

まとめたものです

 

長くて多いので

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Book of my journey

 

ひとり旅をはじめてから

カメラとノートを

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その風景写真と短い言葉たちを

アメブロにて公開していました。

そのページをまとめたものです。

 

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