天然スギのヒミツ

<天然スギのヒミツ>@富山県 美女平原生林 2023.9.21

 

立山の玄関口には見事なスギの原生林が残っている。

入り口は立山登山に向かう人々が列をなすバス停から少し歩いたところにある。

看板もあるし、登山地図にも載っているにも関わらず、ほとんど誰も訪れないのが本当に不思議でもったいない。

しかしアクセスが良いにも関わらず、あの厳かな静けさを味わえるのはそのおかげでもある。

 

日本の固有種であるスギは日本で最もよく見られる樹木だが、そのほとんどが人工林のため、天然スギの巨木林は人目がつくところにはほとんどない。

天然杉の巨木林はわざわざ山に入るからこそ、見ることができる。奥山の見どころでもある。

 

スギの名前の由来は「まっすぐ」伸びるところから名付けられたというが、天然スギの巨木には曲りスギが多く見られる。

この曲がりスギは雪国ならではの姿だ。屋久島の巨木にはほとんど見られない。

そう、冬の間に降り積もった分厚くて重い雪が幹や枝を曲げるのだ。

 

本来、陽樹であるスギは極相林の植生ではない。その証に、この美女林から少し奥に行くと陰樹のブナが純林をなしている。

それでもスギがここに群をなしているのは日当たりの良さと適度な自然撹乱が起きているからだろう。

日本海側特有の重たい雪と、春の暖かい日差しが誘因となる小規模の雪崩がおそらく陰樹をはじめ下草の成長を抑えているに違いない。

 

スギの生命力はすさまじい。そこには根性が見え隠れする。雪、雷、台風で捻じ曲げられてもおられても焼かれても生きようとする。全国の名木・巨木のスギには個性豊かな名前が付けられている。それはその姿がただ大きいだけでも太いだけでもなく、独特の形を見せてくれるからだ。

 

その姿形が私たちの魂を揺さぶる。昔から人々はここにカミを見出し、感じてきた。そして、ふさわしい名前をつけて崇めてきた。名のある巨木はそれだけで愛着が湧き、物語が生まれた。その物語があるからこそ、人々はそこまで会いに行き、大切にしてきた。もちろん、その姿形ゆえに材木としては価値がないからこそ、誰も切ろうとしなかった。

 

屋久島では戦国時代から神が眠る巨木を切り倒すようになったが、彼らはどの巨木を切るかを材木としての価値以外にも基準を持っていた。その方法は巨木の根元に斧を置いて立ち去り、数日後にその巨木にまた会いに来る。そこで倒れていなかれば巨木を切り、倒れていれば切ってはいけなかった。そう、彼らは神様に判断を委ねたのだ。

 

その地域によって何かしらの理由で巨木たちは生き残ってきた。それこそが今現在日本に残る天然スギの巨木たちである。だからこそ、私は会いに行く。

 

天然スギに会いに行くといくつか共通点があることがすぐに分かる。スギの巨木の近くには必ずと行っていいほど綺麗な沢や湧水がある。清らかな水の音が聴こえ、名水で喉を潤すこともできる。

 

スギはたくさんの水を好む樹木だ。世界の平均雨量の2倍を誇る日本の固有種なだけある。

 

人々は山に入る時、水のある場所を大切にする。山は標高が高くなればなるほど湧水が少なくなるし、その都度井戸を掘るわけにはいかない。里山から持ち運ぶには限界がある。だからこそ、彼らの旅路には必ず湧水や清水を辿るようになる。

 

そして何よりも巨木は目印になる。名前と姿形がユニークなら地図にも記しやすいし、言葉でも伝えやすい。そしてスギはまっすぐまっすぐ空よりも高く伸びようとする。

 

人々がそこに集えば、周りの草木が成長しづらく、ますますスギは栄養分を独占することができる。さらにまっすぐまっすぐ伸びていく。こうして、スギは巨木へとなっていくのだ。

 

おそらく美女平の天然スギの巨木たちは立山へと向かう人々たちに愛され、彼らの物語を見守ってきたことだろう。

 

あなたがこれから山に入る時、その入り口にスギの巨木があるのなら、ぜひとも会いに行ってほしい。そして、その物語に耳をすませてほしい。それだけで山旅は一段と深くなる。

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そのまんま、自己紹介です♪

Journey's Diary

 

大学卒業後、国内国外旅してきて

 

撮り続けた写真と綴ってきた言葉を

まとめたものです

 

長くて多いので

暇な時に読んでください♪

Book of my journey

 

ひとり旅をはじめてから

カメラとノートを

常に持ち歩くようになりました。

 

その風景写真と短い言葉たちを

アメブロにて公開していました。

そのページをまとめたものです。

 

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