そんなところに宝がある ヒカリゴケ

<そんなところに宝がある ヒカリゴケ>

@富山県立山・八郎坂 2023.9.22

 

私は誰も歩かなくなった道に興味があり、心が惹かれる。古道と呼ばれる道はもちろんのこと、有名な山でもマイナーな登山道を選んで登る。そんなところに宝があるからだ。

 

今回の立山の旅では八郎坂のルートから登り始めた。日本一落差がある称名滝から道は始まる。駐車場から称名滝に行く道からは川を挟んだ向かい側に絶壁が並ぶ。称名滝に行く手前の橋を渡ったところに八郎坂の入口がある。

 

八郎坂の命名の元となった登山家は名ガイドだったようだ。この絶壁に囲まれた称名滝の中、この一部分だけ草木がしげり、そこを何度もスイッチバックを繰り返して登っていく。この日は前日の夕方から強い雨が降り、朝には霧雨となって、雰囲気は抜群だ。人も全くいない。

 

立山までの王道ルートのスタート地点である室堂までケーブルカーと高原バスで2時間もあればついてしまう。

しかし、この称名滝から歩いて9時間ほどでもたどり着ける。だがその8時間近くが登りとなるため、ほとんどの人がこの道を選ばない。

 

もし、山頂が目的地なら前者を選ぶだろう。しかし私の旅の目的は山頂ではなく山そのものを楽しむ、歩くことにある。だからこそ、麓から奥深くまで続く道を選ぶ。そういった道こそ古道と呼ばれるような昔ながらある道だ。

 

八郎坂ルートは実は1924年(大正13年)に当時の第九師団富山連隊によって開かれ、弥陀ヶ原周辺は軍事訓練の場として利用されていた。

 

元々はその急坂のため「胸突き八丁」、そこから”八丁坂”と呼ばれていた。その後、登山者から「立山の谷や尾根には、有名なガイドの名前が付いている、”八丁坂”にも、名前を付けたらどうか」との話があり、当時有名な山岳ガイドであった佐伯八郎さんの名前をとって、「八郎坂」となったという(富山県のHPより)

 

1954年に千寿ヶ原から美女平までケーブルが開通したことで八郎坂ルートはほとんど誰も歩かなくなり、一気に廃れてしまったが、1977年に再整備された。それでもここを歩く人は少ないが、毎夏に立山登山マラニックの最大難所として立ちはだかっている。

 

日本の登山道にはこれに似た歴史を持つルートがいくつもある。そういったルートは人が少なく静かな旅を楽しむことができる。鳥たちを始め野生動物とも距離が近いのが魅力的だ。

 

昔は誰もが気にしていたところ、しかし誰も目に止めることなく過ぎ去ってしまうところ、そんなところに宝はがある。ゆっくり静かに歩くとき、その宝に出逢う。

 

この道はヒカリゴケの自生地である。崩れた岩の隙間を覗くと光り輝く彼らがいる。その光についつい足を止めてしまう。何度も何度も見つけるたびに、足を止めてしまう。写真を撮ろうとしてもなかなかうまく撮れないのもヒカリゴケの魅力の一つだ。

 

ヒカリゴケはそれ自身が輝いているのではなく、光合成の光が反射している。崖の暗い穴の中で光っているにも関わらず、その光は太陽光を反射したものだという。これもまた不思議なことだ。

 

写真を撮ろうとして穴を覗くと太陽光が入らなくなるから、写真に写ったヒカリゴケの光が物足りなく感じるのだろう。これをフラッシュで補おうとすると今度は大袈裟な感じの色になる。

 

自然写真家にとって「自然光が一番綺麗な色になる」というのは常識の中の常識だが、ヒカリゴケはそれがよくわかる一例だ。だからこそ、ヒカリゴケ好きたちはやきもきする。

 

今では優秀な加工アプリのおかげで綺麗な画像になるが、それでもやはりこの目で見る色とは比べ物にならない、と感じるのは私だけだろうか。だから、実際に見にきてほしいと思うのは、自分だけの宝物を写真ではなく実物を通して自慢したいからだろうか。

 

はっきりとした理由はわからないが、多くの人が通らないところに宝があるからこそ、私はそんな道を歩きたくなる。歩いているとワクワクする。宝物を見つけると誰かに話したくなる。その繰り返しが私の旅である。

 

八郎坂を一気に登ると、目の前の道路を大型のバスが何度も通り過ぎていく。ここから室堂まではバスの大きな音を聞きながら、緩やかに登っていく。バスに乗っている人たちと目が合う。

 

有名な観光地の中で「ガイドブックには載っていない隠れ家カフェを知っているぜ」的な通な気持ちになって私は室堂に向かっていく。

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